・縦長の構図絶景月に雁
・萱の葉に変態未完飛蝗の子
・無線にも混線の在り秋の空
・柿食へばひたぶるに嘘吐かまほし
・黄昏れて黄蝶黄葉に宿借らむ
・玻璃越しの白磁鶴首神迎え
・霜月や革命暦を改竄す
・虫の音やアール・グレイの香に潜 しづむ
・夜白むまで死の讃美文化祭
・色葉もてぼうぼう頭畦並木
・女郎花描不可
ゑがくべからず男絵師
・鈍 にび色の凩一号袖に入る
・単純な男にあらじ葛の花
・今は昔敏馬 みぬめ検番荻が浜
・肉食のころぎすばかりジェノサイド
・地軸とは磁針の震へ冬立ちぬ
・掻き抱く何ものも無く秋の琴
・小六月誰憎むべき偏頭痛
・初時雨学窓濾しに垣間見む
・モヂリアニの女青褪む冬隣
・晩秋や融通無碍の雲の舞
・昼下りしし鍋のしし瞑目す
・三島手の微熱や木火土金水
・あきらけし秋日曝す嘘の恋
・かしかしと脳 なづきに充る紅葉哉
・鳥渡る景唐突に北野坂
・風色に生成りのシーツ秋の終
はて
・七五三不測の虹を発句哉
・汐溜り昨日の星の墜ち処 獅子座流星群
・床冷えの夢に紅葉を狩暮らす
・冬隣り定義するものさるるもの
・薄き情には非ざるを韓 からの粥 光州のハンナちゃんから小包
・夢幻能街灯覆ふ色葉哉
・採掘場骨白々と冬の月
・風集め鷹羽薄の優弧哉
・須臾の夢鰐駈け廻る枯野哉
芭蕉忌
・月上弦未熟を愛す青き桃
・馬齢のみ翁を越えて昨日今日
・風呂井戸や芭蕉飛び込む心理劇
・紫の燠 おきの如くに残り菊
・巨いなる月現れて秋昏るる
・綺麗な手枯葉作戦といふ汚辱
・活版の一冊の本明日師走