・現にも味はひ了へり烏賊キムチ
・凍て網に脚数足らぬ女郎蜘蛛 六甲山
・打たれても打たれても今枇杷の花
・光陰遅速無く月極まれり
・我はふくろ小倉北方安下宿
・風吹かば燒栗打令歌ひたく 燒栗打令=クンパムターリョン 韓国民謠)
・枯るるとは思ひ斬ること枯木灘
・絵葉書の世界よろしく京の雪
・河豚チゲやソウルに海は無かりけり
・黒雲の綻び縫ふや寒鴉
・落葉焚家無き群の凝まりぬ
大倉山
・尻端折ちちつるつるすぴ三十三才 みそさざい 古い鳥類図鑑にこの鳥のさえずりの聞きなし
・腥 なまぐさき話の種や狸汁
・火遊びはすまじきものを烏賊徳利
・冬銀河川畑文子聴き了へり
・大寒の夕焼どつと燃崩る
・突掛で酒屋の小路寒波来
・沙果 さぐわ噛ば鉄 かねの味するレノンの忌 12月8日、沙果=林檎
・安楽死聖母非在の基督図
・明るさのおもむろに見ゆ枝垂柿 北陸道
・伊呂波歌氷の救ひ其もまた
・薄明の夕空透かす寒の月
・蒟蒻の受難理不尽針供養
・坊ちゃんと猫とぐい句や漱石忌 12月9日
・水炊きや人參紅一点の妙 P&C 忘年会
・年忘れ頼むの君の粉糠雨
・万歳や疾うに遺物となりにけり
やすしきよし回顧映像
・前線を「凩一号」通過せり
・うたた寝に薄咳一つ気の弱り
・冬の旅銀板写真今日の夢
・遠吠のヌクテてふ語を辞書に狩る
ヌクテ=朝鮮狼
・枯菊や大輪なれば尚更に
・抜け殻や身を木枯らしの薄なさけ
・かいつぶり友の句集を空に読む 田中丸善則句集「鳰の空」
・寒鯛の面構へ佳き夕餉かな
・あはあはと独住居や隙間風
・山手路山茶花の散緋毛氈 nddism灘散策
・黄昏の紅葉颪やトアロード 同上
・柵の影な忘れそ賀状買ふ
・埃舞ふ北斎の鷹睨む方 北斎絵手本
・精神棒否厳寒のソウル恋ふ
・頑是無くもオンドル欲りつ就眠す
・水底に邦
くに在らまほし浮寝鳥
・煮凝の自動生成余得かな
・インバネス似合ふ安吾や風媒花
・アクリルの空水色に鳶廻る
・慈善市買叩かるる実千両
・永劫に春待つ罪や虚栗 みなしぐり
・有耶無耶に春待月を蚕食す 春待ち月=旧暦12月
・在ることの不条理冬の博打うち
・流氷に望み託卵の海盤車かな
・来る年の愚行前借り暦選り
・崖 きりぎしに大き薔薇の実熟 うむ夕 川西市
・桟橋の下や影絵の浮寝鳥 神戸埠頭
・持ち重り指に逆毛の柿落葉
・短日や異邦の葉書着陸す
・枯庭に実式部の実の微睡みぬ
・銀笛や裸木並ぶ湖の道 琵琶湖沿線
・湖西線隧道 トンネルばかり冬至雨 同上
・太刀魚は立ち泳ぐ魚と思ふべし
・ロゼットてふ愛の形も在りにけり rosette=根出葉
・春信の危な絵優し置炬燵
・雪譜読む越後の酒や年の暮
北越雪譜
・野菜棚下仁田葱の威張り居り
・クリスマス嵐冀ふは何時からぞ
・五年越のリース坐すモリス亭 さりーちゃんお手製のリース
・寄合の餠搗腰の定まらず
・茉莉花茶 ジヤスミンテイ思ひ出す程のことも無き
・金盥加奈陀喇嘛教羽斑蚊 カナダラマはハングルの五十音
・邪まな風訪ひて咳きぬ
・茶花めく聖誕祭薔薇
christmas rose忌名哉
・眼裏に荒野渺々歳の涯
・海と雪詩人とプリマ死の讃美 韓国映画「サエチャンミ」
・底冷えの夜温突 オンドルの夢語り
・煤掃きの後や神州天馬侠
・知らざりき紅蓮地獄の寒さ哉
・昔男丹頂の如独りなり
・北辰に芋売の声遠ざかる
・掌 たなごころ温かるべし雪女郎