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木偶坊でくのばう魚は浮木まんばう花は木瓜ぼけ沖の大夫たいふの仲間優しき
島流し海のハイエナ恥晒し身捨つるほどの矜恃無ければ
早朝あさまだき湖面を横切よぎる鳥の道瞳切り裂く瑠璃の閃光
その性はデラシネ擬もどきの浮き巣にも人見知りにも明らかにして
二打ダースを一からげにして六文で売られてゐしが買ふ人も無し
お馴染みの主役不在のオペレッタ射殺の至福醜聞の快楽けらく
寸劇の台詞「ケ−ン!」の一声を切なく吐きぬ園児の吾は
花見時王子の森の鳥舎前落花を呪ふ丹頂の聲
色物の芸人崩れと生来の声を忘れし物真似鳥と
剽軽な団体旅行世話し鳴く目白唖なら良かつたものを
顔色を変へる特技も役立たで繰り返される聖誕日の虐殺holocaust
of Xday
蜜を吸ふ原色写真を見る度に思ふ「蜂鳥と雀蜂」的対句
雨を愛めで人に愛でらる所以は何?汽罐車と相似の象形文字
ヒエログリフ
惑はずと人には言へど信濃なる空からの巣箱の戀ひしかるべき
労咳らうがいも彼かの鳥も亦諸共に時代遅れの象徴めいて
囀さへづりは極々上吉色は粋その糞ふんまでも餅肌の素
麦畑我が世の春を告げる場所上昇志向の権化と呼ばへ
職業は打楽器奏者パーカッショニスト実体は神と人との二重間喋
黒無垢の花嫁衣装今日だけは三千世界の弔事てうじも延期
盗賊もイエスも蜥蜴とかげも蛙まで平等に刺せ速贄はやにへとして
篭の中女系家族は子沢山近親相姦極まりて後
韓人からひとの吉鳥と言ふ翼もて彼と吾との懸け橋となれ
闇を領す鳥属きつての哲学者獰猛にして愛嬌の有り
今一度生れ変はらば水際立みぎわだつ語彙の詐欺師に成りたきものを
サンボ通信第11号(1988/11/25発行)所載。 Morris.は鳥類は、あまり馴染みが無く、本歌集の素材に関する知識も書物から得たり、いにしえの和歌などから喚起されるイメージから作った物が多いようです。現実の鳥の生態や習性と、矛盾する個所があればご指摘ください。 この1988年という年は、Morris.にとって、韓国へ行き始めた年として記憶に刻まれています。
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