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一炊の間まに一切流転の夢簡単過ぎる逸話に陥穽おとしあな 邯鄲の夢 大槐安國南柯なんか郡大守の勤め二十年蟻と見し世も目醒れば皆無
生死の苦楽に無知な民を嘉よみす黄帝の胸裡こころ侵をかす虚無悪魔
鴎鳴く釜山と見しが淫夢の巫山ふざん山の神との情交甚はげし
魚魚を鳥鳥を食はむ美風人人を食ふ掟の優しさ
麻酔麻痺麻疹麻胡麻羅摩耶婦人麻姑掻痒さうやうは麻子の手の夢
うたかたの夢の戀路は水の上危ふき橋を爪立ち歩き
夢合せ鏡の裏の隠し彫り人の心は夢の召人めしうど
夢の網四方八達蜘蛛の絲いと藻掻く手足に絡まる迷路
世を救ふ不埒ふらちな望み発覚し八角堂に観音監禁
軟やはらかき夢の身体ぞ妬ましき紅き海鼠の腸を断つべし
播磨なる夢前ゆめさき川を遡り遡りつゝ胎児に還る
恨み故また愛故に吾人わがひとの夢の枕に立つも萎なゆるも
夢文字に草の冠奇蹄目菜食主義者貘の好めば
無腸の句佳人の夢に入る櫻昨夜咲く花櫻の冥くらさ
春狂言襁褓むつき一月着替えて二月夢の三月弥生尽
命名の至福壁蝨だにより海の蜘蛛三分の蟲に丈六の夢
荘周は青虫蛹蝶と化す夢が現うつつか現が蝶か
禁断の戀に淡路の渡し船夢野の牡鹿深淵ふかみに嵌はまるも
フロイド式晩餐会は仮面劇母子相姦の絵図を引く父
捨て鉢の身の処し方を粋いきと呼ぶ性と死と夢三竦縮さんすくみ
飛翔より疾走の夢切実に芭蕉沁み入る空蝉の聲こゑ
瓶詰めの月光液の企たくらみは「夢に私を見て欲しいから」
夢中の夢劇中の劇土壇場壇どたばたの喜劇は悲劇の宿酔の夢
ぬばたまの闇は夜見また黄泉の國忌名いみな連なる夢の眷族
サンボ通信19号(1992/01/01)所収。Morris.は割とよく夢を見る方ですが、この歌集は、夢にまつわる故事や、夢の文字の付く地名、動植物などをネタに捏ね繰り上げたものです。冒頭から4首目までは、中国の逸話に出てくるものです。辞書を見ればたいてい載ってるものばかりです。 「夢虫」は、普通蝶の異名として用いられることが多いのですが、上記の歌の夢虫は海蜘蛛と呼ばれる、海棲の蜘蛛類の仲間(Pycnogonum tenue.)です。 一時、Morris.日乗で、毎日のように、自分の見た夢をメモしてたことがありました。面白がってくれる人もいましたが、危ないから??やめたほうが良いという意見の人もいました。一番いやな夢は、仕事の夢です。本当に疲れてしまうのです。
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