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【初 期 歌 片】 |
サンボ通信創刊號(1987/08/05)掲載。前にも書いたように、これの制作は1974〜75年とそこそこ古い。当時小倉で学生やってて、特に文学青年ではなかったのに、これらがノートに殘っていることが、不思議にすら思われる。北原白秋、塚本邦雄、前川佐美夫、寺山修司などの歌集を読みかじって、その眞似をしたかったのかもしれない。かなり生硬だったり、文法的にあやしかったり、無理無體な破調も多いが、なに、最近の作だって、大して代り映えはしてない。まあ、わが青春の青の褪色をしのぶよすがくらいにはなるだろう。 |
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時經りし線香花火淫らに色褪せ先端の火藥庫夢を忘れ 目に見えぬロセッティの鳥捉へ來て籠に入れしがそのままになりぬ 快樂は罪嘘は罪葛藤は罪眞實こそ罪 いたづらに今日もひと色無節操な假裝迷彩カムフラージュの上塗り 幾夜經て惱み狂氣に轉じてもあはれ蒸留器レトルト内の戀 舊き寫眞の少女なりしか吾が母はなどて明日を思ひ患ふ 戀の過去微睡まどろみの現在いま罪や未來いつ待つは束の間君美しき 萬物烏賊墨セピアに染みて秋失~のニ−チェの倣び髪を斬る 「死」ばかりを欲りし蒼き季節逝き両性具有~晩れ方に詩す 色々の色に塗れしパレットは己が心の履歴書に似て 春夜森淡黄に微睡まどろみ獨り聴く鳥人國の子守唄 繰り言を言ひ果つる日は何時來る乎熱き血潮も今は人肌 新緑既に緑青の苦さもて瞳刺すエウレカの花散りぬるを 蟲を食む仲間妬みて遣瀬無く未完のままのパスカルの三識菫パンセ 吾もひとりの血の浪費家靜脈の青罅環を描いて契りをり 薔薇枯れてバルバラの唇白く冷ゆ幻視者として流浪の旅を 「否」の形状かたちに唇閉ぢし女有り白きテ−ブル無限に延びて 詩も歌も我が身ひとつの冬にしあればせめて胸裏に吹雪吹き荒れよ 笑ひ笑ひ笑ひ疲れて冬の午后熱き涙の戀ひしくもあるか 珈琲はK人の苦き血ならず哉飲み干せば町に流るゝ朝のBlues 心音は識らず識らずにブル−スのリズムを打ちて遂には停まるか 蒼墨色blue-blackのインク戀しも「朝」は夜の裡に孕まれし故 取り戻す術無き故に美しく天翔くるものか心優しき女のブル−ス 變身の畏れと歓喜裡に秘め座り續けて石と化す君 北國の春逝かむとして青空かなしくも澄めりライラック忌
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