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歌集はな
 サンボ通信29號(1995年4月1日発行)所載。

この年1月17日の神戸地震で、Morris.のアパートも全壊し、仮住いの中、パソコンも疎開させて使えなかったので、中古のキューハチノート買って、回りの友人知人の援助をたのんで、わがままを通してやっと発行したサンボ通信だけに、思い入れ深い一号となった。

なるだけ震災臭を出さぬようにと粋がって、歌集のテーマも心の中に思い切り花を咲かせた作品に仕立てたつもりだが、本誌には「罹災日記」2ヶ月半を掲載して不徹底振りを露呈させている。

結ぼれて気鬱々と冥くらむ時節とき裡に溢るゝ血の音を聴く
・蕾

潔さ山の面を淡紅に染めし浮名も瞬きの間に
・山櫻

葉に紛ふ花瓣はなびらかなし遅咲の天子の産着鬱金の櫻
・御衣黄

花を見る人を見る花交歡の宴も哀し自惚鏡
・花見

櫻紙やはやはやはと重ねてよ子供心に戻りたいから
・八重櫻

夕暮れの枝垂櫻が手招きに心預けて發狂したし
・枝垂櫻

短けれと思ふにあらで眼裏に末期の見えて研ぎ出す刃
・花の命

輝きは時代を超えて底光る木肌に禁断の蒔繪甦る
・木肌

色よりも気性似通ふ花と魚妬みて幹に骨斫ち込めり
・櫻鯛

金銀の秘密の通路花が鍵贋金作りも通抜け過ぐ
・造幣局通り抜け

花落ちて更なる舞台青々と若葉の香少年の戀
・葉櫻

瞳孔が淡紅色に霞むまで花吹飛ばす風止まずあれ
・花吹雪

肥前なる生家湯の町「小櫻」の屋号の宿も灰塵に帰す
・小櫻屋

秋の午後若き晶子の歩きてし櫻並木の枯葉の精緻
・櫻紅葉

フランシス・ジャムが愛せしプリムラを母の忌日に手折らず帰る
・櫻草

韓人の花見即ち演舞会ポッコンノリの響きそのまゝ
・ポッコンノリ(櫻花遊)

上中下吉野の里のヒエラルキー千々に亂れし舞踊儚む
・千本櫻

定番の櫻々と弄あそばれし花には罪の無かりしものを
・染井吉野

咲くや斯の花秘め置きし血統の名殘の裔すゑは薔薇の一簇
・薔薇科櫻目

生涯の服務つとめ一株木を見詰め見詰め續けて恍惚となる
・櫻守

しかばねの滋養豊かに育まれ恐ろしき程花の木の美
・櫻の樹の下

桜ん坊二つを口腔くちに含みつゝ遥けき肉の戯れ懐おも
・櫻桃

誰よりも櫻を愛す鱗翅目解脱する日は花になるから
・毛蟲

濃色の彼岸櫻は咲き急ぐ供花にならぬを忘れむために
・彼岸櫻

海に散る花の思ひの塊は薄紅色の爪に變はると
・櫻貝

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