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サンボ通信第4号(1987/11/05)掲載。Morris.のアリス狂いの落とし物と言える歌集だが、今読み返すとあまりに原作に促しすぎて、物足りない気がする。紙面ではテニエルのカットを多用してそれだけで華やいでいた。永遠の少女としてのアリスは、永遠の少年の心を、永遠に蠱惑し続けるのだろう。タイトルは最後の歌を見れば分かるように、Aliceと算術(arithmetic)の語呂合わせである。
花ならばアイリス・アリサム・アマリリス ありんす國の西洋煙管花 Alistolochia
木の芽時月と兎は時期外れ行進曲 march伴奏の舞踊にも似て
如何やうな蝶蛾に變身するならむ茸の上の水煙管芋虫 smoking-caterpillar
理不盡さ牡蛎は身の裡共犯の海象 せいうち流す鰐の泪
主催者が堂々巡りの鳥故にコ−カスレ−スのゴ−ルは非在
飛切の生娘見ても煙たがる鏡の國の聖一角獣 unicorn
騎士落馬自慢の智慧も役立たず老いたれど行く外に道無し
敗者は斬首 打棒 stickは鳥 球は針鼠 完璧遊戯 紅鶴門柱球技 flamingo-croquet
紅薔薇は姉 白薔薇は妹との理 ことわりも解さずペンキ塗りたくる番兵は死刑
倫敦の帽子造りは哀しけれ気触るる迄の水銀中毒
女王様のタルト盗んだジャックが被告法廷は驚愕箱 Jack-in-the-boxのやうな物
泣き泣きて流す涙の涸れ果ててチエシヤ猫憑きの己 じぶんを見出す
お茶會は狂人ばらの好むもの正常人 まともなものは糾弾さるべし
願はくは名無しの森で首吊らむなどと言ふのも口舌の科 とが
言葉てふ言葉は彼と共にあり塀の上の鶏姦詩人卵型怪物 Humpty-Dumpty
腹も口も態度も顔もみな自乗烏は苦手のTweedledum&Tweedledee
件のス−プ味はひつゝ聞かまほし眞物 ほんものの紛ひ海亀の身上話を
地を轟かす邪婆乙奇異 Jabberwocckyの鬨の唄怖くて聴きたいその曲調 しらべ
暗き部屋camera-obscura のき鏡に寫し出す少女の姿燃え盡るまで
沙翁Shakespeare の眞似び君をしも麗しき夏の一日に譬ふるも足らず
球體と速度への愛根源の希求 ねがひは刧初 はじめより死球願望
車内では洒落を飛ばすことを禁ず“少女取扱注意 Lass with care”のため
日本語は膠着語すなはち鞄語そのものとは嬉敷島の大和し美し
生贄に穢 けがれのあるは法度故聖少女 St.Aliceは今朝もお寢 やすみ
9の90倍なんて出来つこない初等數學 Arithmatic嫌ひのアリス女王 Queen Alice
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