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歌集 酒 精 あるこほる
酒飲めば千々に物こそ可笑をか しけれ刺身一つも肴あてにはあらねど
月見れば千々にものこそかなしけれわが身一つの秋にはあらねど--大江千里
北高地ハイランド 泥炭ビート仕込の琥珀液醉生夢死の無血革命
・SCOTCH WHISKY
唐黍たうきび を丸齧りする心もて呷あふるべき酒騒がしき酒
・BOURBON WHISKEY
バッカスの血は赤くまた白く流れの果ては地獄の河口
・WINE
欲望を酒で醒して催淫の街に船出の伊達男達
・SHERRY
そのかみの女優の唇くち の艶ゐろよりも紅き林檎の酒を一杯
・CALVADOS
乾杯の為とな思ひそ発泡酒三本の鞭むち 撓しなふばかりに
・CHAMPAGNE
地中海マディラの島の森に住む鳥人秘匿ひとく のワイン盗まむ
・MADEIRA
生命の水生温なまぬる く朦朧と脳漿に充つ恍惚の不安
・BRANDY
桜ん坊ユ−ゴの冬は貧しくて苦い薬の様な毎日
・MARASCHINO
龍舌蘭メヒコの坐女みこ は左利き掛け声に似る祈祷の響き
・TEQUILA
貧民も富豪も王も盗賊も精神こころ 透くまで寝ずに飲まほし
・GIN
無骨さは砂糖の糟かす の出自故甘党揃の似非えせ海賊 パイレーツ
・RUM
樽の中ホップの醺かを り満ち満ちて地上の楽園ここにあるかと
・BEER
冷やも良し爛かん も懐かしコップ酒かくも清すが しき幸福やある
・清酒
麦に芋胡麻に粟米砂糖黍主は違へど等質の夢
・焼酎
一瓶を数秒で空けしその後の祭囃は言はずともがな
・泡盛
浅草の神谷バ−での思ひ出は君と交か はした摩耶かしの酒
・電気ブラン
一人居て甕かめ に梅酒を漬け置てちびちび飲まば末期の親ちか し
・梅酒
苦蓬にがよもぎ 辛酸嘗なめし果ての果て酸いも甘きも知り尽くす後
・VERMOTUTH
布幌馬車ポジャンマチャ 統一の日はいつ来るや学生達の啜る乳液
・マッコリ
大陸の無限軌道を思ひつつ黄色の酒を飲みし日のこと
・老酒
香草かうさう のいがらつぽさを愛すてふポルカの故郷さと の野牛陶然
・ZUBROWKA
喉を焼き臓腑焦がせし赤旗の紅蓮ぐれん の炎今はた何処
・VODKA
世の中に絶えて酒など無かりせば春の桜は首頭 のつけから無視
世の中に絶えて桜の無かりせば春の心はのどけからまし --在原業平
サンボ通信21号(1993/01/01)所載。正月号でもあったので、好きな酒、時々飲む酒、めったに飲まない酒から、飲んだこと無い酒まで、さまざまな酒のことを思いながら、酩酊気分で捻り上げた25首。
冒頭歌と末尾歌は、名歌のパロディです。
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