あきのぬにさきたるはなをおよびをりかきかぞふればなゝくさのはな 秋野爾 咲有花乎 指折 可伎數 七種花 芽之花 乎花葛花 瞿麥之花 姫部志 又藤袴 朝貌之花 一般に「秋の七草」は、引用した憶良の歌に準拠している。 後の歌の「をばな」は芒で、おしまいの「あさがほ」は、朝顔や木槿という説もあったが、現在では桔梗のことを指すというのが定説になっている。 桔梗の開花期は8、9月と書いてあるが、近所の花壇では5月末から咲き出して10月くらいまで咲き続ける、けっこう長期間楽しめる。 野生と栽培の差なのだろう。「ききょう」は漢名の「桔梗」からきたものらしい。 和名には「ひとへぐさ」「をかととき」「あさかほ」などに加えて、もう一つ「ありのひふき」と言うちょっと変わったものがある。 語源と言えばばいつもお世話になる『大言海』にもそっけなく「解スベカラズ」とある。漢字で書けば「蟻の火吹」とでもなるのだろうか。 西洋ではBaloon flower, Bellflower, Campanuleなど花の鐘型に着目した命名が多いようだ。桔梗の紋所は明智光秀で有名な美濃の土岐氏の家紋として南北朝時代から用いられてきたそうだが、特徴的なのはこの紋に限っては淡青色に彩色されるため「水色桔梗」とよばれることだ。日本の紋で、黒以外のものは珍しい。土岐氏では旗や幕も水色のものを用いられたという。 何と無く雅やかさを感じさせる。派手ではなく、香もほとんどない、桔梗の端正なたたずまいは、初々しい若武者を思い起こさせるが、一面、危ない色気みたいなものも併せもっていて、茶花などには向かない気がする。
「トラジ」と言う韓名は日本人の耳にも馴染んでいるのではないだろうか。 桔梗には青花と白花があって、日本では青花、韓国では白花に人気があるように思える。 何と言っても韓国での桔梗は観賞用というより、生活に密着した有用植物なのだ。トラジの根を使った料理も多く、薬の一種としても頻用している。 根にはサポニンを多量に含んでいるため、漢方では腫物、化膿性炎症、肺炎、中耳炎などにも効能があるそうだ。 有名な江原道民謡「トラジ」も、山にトラジの根を取りに行く情景を歌っている。 「トラジ トラジ ペクトラジ シムシムサンチョネ ペクトラジーー」 ソウルの民俗酒場でトンドン酒の肴に、このトラジの根が出てきたが、味は牛蒡を生で食べてるみたいで、あまり美味とは思えなかった。 一緒にいた韓国の友人に「味より風味を味わわなくっちゃ」とわかったようなわからないような言葉で窘められてしまった。 ●投入の桔梗抗ふ五稜郭 |