かぜくさ
中国の「風知草」と混同しての命名だそうで、明治時代まではその名で呼ばれていたこともある。 ミチシバと言ういかにも雑草らしい名もあるくらい、決して見栄えのする草花ではない。 イネ科スズメガヤ属で、最近は大型外来種のシナダレスズメガヤ(Weeping-Lovegrass)の方が大きな顔をしていて、こちらにはセイタカカゼクサの別名もある。
瑞穂の国に生まれ米を主食にしていながら、どうも僕にはイネ科の植物の区別が付きにくい。 第一に矢鱈種類が多い(世界では700属、10,000種)。 次に葉の形がおおむね、長細い刃型で区別しにくいし、全般的に花が小さくて地味で印象が弱い。 とにかくよく似た種が目白押しで、この「かぜくさ」のそっくりさんらしきものを、図鑑で調べると、ヒメアブラススキ、ヌカキビ、コヌカグサ、ホッスガヤ、ニワホコリ、コスズメガヤ、カモガヤ、イチゴツナギ、ナガハグサ、スズメノカタビラ、ウシノケグサ---etc. もちろん僕の鑑識能力不足で、そう見えるだけで、一つ一つの種はそれぞれ際立った特徴を持っているのにちがいないのだろうが、いかんせん、すべて同じように見えてしまうのだ。
「風草」という名が間違って付けられたにしろ、これらの草々は風が吹けばその動きで、風の無いときもその姿から風を連想させる。 そもそも風は目に見えない空気の移動だから、風自体でなく、それによって揺れたり靡いたり飛んだりするものによって、間接的に感得するものだ。 とりわけ葉や枝の動きでそれを知るのは、定番の発想で、クリスティナ・ロセッティも歌っている。 Who has seen the wind?
風に靡く草はすべて「風草」と呼ばれる権利がありそうだが、先に挙げたかぜくさ連合軍のなかでは、「ヌカキビ」が一番その名に相応しい風情を漂わせているようだ。 子供の頃から親しんできた有田焼、香蘭社の製品によく使われてた信夫草(シダ)の模様も風草に似ていたな。 ちなみにカゼクサの葉は、開く前に茎の節に当たって窪みができる。 葉を十二等分してその窪みの場所で台風が来る月を占うというから、それなりに名は体を現しているようでもある。 Botanical Garden目次に戻る |