かえで
日本の秋の紅葉を代表するカエデに「楓」の字を用いることが多いが、これは満作科の「フウ」を意味するもので、明らかな誤用だ。
と、言っても目くじら立てて「御用だ御用だ!!」と取り締まるわけにはいかない。 すでにこの国では動植物名は基本的にカタカナ表記に成り果てているのだから、僕のように漢名に拘る方が、少数派なのだ。 カエデはその葉の形状から容易に想像が付くように「蛙の手」に由来するのだが、萬葉の時代から「鶏冠木」の表記が行われている。 たしかに紅葉したカエデの葉はトサカにも似ている。 日本に20種ほどあるカエデの仲間には掌状でないものもあるし、紅葉はもちろん、黄葉するものも多い。 カナダの国旗でお馴染みの三裂したサトウカエデはメープルシロップの原料として有名だが、他にもイタヤカエデ、ギンヨウカエデなどには蔗糖が多い。 樹皮を煎じて洗眼薬に用いる目薬の木もカエデの仲間だ。
数ある紅葉の代表はやはり、「いろはかへで」と言うことになろう。 一般に「いろはもみぢ」の方が通りがよいくらいで、色も形も他の追随を許さない。 春は桜狩り、秋は紅葉狩りと洒落込みたいものだが、この紅葉狩はなかなかに時機を得るに難い。 來る秋ごとに今年こそと、思いながら果たせずにしまう。 数年前韓国雪嶽山に紅葉狩りを敢行した時も見事に時機を逸してしまった。 今年は是非雪嶽山より素晴らしいといわれる内藏山の紅葉狩りに挑戦しようと考えているのだが--- ●葉の色は變へでも短か命哉 |