蔓が黒くて細いので鉄線
花の姿をそのまま見立てて風車 クレマティスと言う名は、あの樽の中の哲人ディオゲネスがギリシア語の若枝(clema)のような蔓から命名したとか。 風車はともかく鉄線とはあまりにそっけない、せめて鉄線蓮と呼ぼう。 いやいや、鉄線の潔さこそあの花に似つかわしい。などと一人で漫才めいた掛け合いをやっても始まらない。 花弁八枚なら風車、六枚なら鉄線と覚えておけば見分けやすい。これも正確に言えば萼片なのだが、花びらでいいのだ。 奈良は佐保路の法華寺境内に咲き誇っていた風車は見事だった。 本尊十一面観音の艶やかさとこの花を見に、足繁く通った頃が懐かしく思い出される。 風の噂では、数年前から觀音像は本尊のレプリカしか拝めなくなったとか。惜しいことだ。 花言葉に「心の美」と「たくらみ」の相反する二つがあるのも、実はこの二つが共存しているのに違いない 。 もちろん、KleeとMatisseのこと。だが、二人の画集にこの花の姿を見た記憶はない。 ●晩れかかる街に鉄線救ひなく |