ぼ た ん
 
 
牡丹と言えば蕪村。 

・牡丹散て打ち重なりぬ二三片
 

・散て後おもかげにたつぼたん哉 
 

・閻王の口や牡丹を吐んとす 

なんてったって、あの大輪、重弁の豪華な花を五七五の小宇宙にからめ取る技はまさに神域と言うほかはない。 

「花王」の称号を持つほどに中国では愛好された。

絵画の題材にもよく用いられてて、精密な図案の切手シリーズを以前持っていたことがある。キンポウゲ科の木本で、花期はおおむね5月、俳句では夏の季語ということになる。

大麻寺などの寒牡丹はこの限りではないだろうが。奈良に住んでいた頃一度だけ長谷寺へ牡丹を見に出かけた。

何故か非常に疲れた記憶ばかりが残っている。牡丹の花の最高潮は本当に一瞬しかないような錯覚に襲われる。そのくらい緊張を強いる花でもある。

古来「気を吐くこと虹のごとし」と形容されたほどの(先の蕪村の三句目はそれを逆手にとったもの)その気に僕は圧倒されたのかも知れない。

だから目の覚めるような紅の花より、白牡丹に心惹かれる。

薔薇よりも複雑微妙な襞々の重なりは純白な花弁ほどその繊細さを示してくれる。この白い花のうちにも紅を見ようとした俳人もいるが、白牡丹には色を超越したなにものかがある。 

・山蟻のあからさまなり白牡丹 蕪村

牡丹鍋は猪肉の料理で、まだ食べたことはないが、赤みの肉をちょうど牡丹の花のように皿に盛りつけることから名付けられたと憶測する。

「唐獅子牡丹」からの地口との説もある。花札なら牡丹には蝶、猪には萩が取り合わされてるからこれと直接の関係はないのだろうな。

街角で牡丹を見る機会はそう多くはないが、たまさか、それもちょうど見頃の牡丹に出会うと、まる一日得をしたような気になるのは貧乏性のせいなのか、この花には「富貴草」の別名もあり、花言葉もやっぱり「富」となっている。

北朝鮮、平壌の北方に「牡丹峰」という小高い丘のような山がある。ハングルよみでは「モランボン」である。

●牡丹怒る似而非詩人奴のへらず口 

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