この小さな本を過去に3冊買った記憶がある。現在手元に残ってるのが、どこで買ったものか判然としないが、つの笛、勉強堂のどちらかで、どちらも百円均一台で手に入れたはずだ。2冊は友人にプレゼントしてしまった。
千趣会といえば「COOK」などの雑誌を通信販売している会社で、本書もそのような流通形態をとったらしく、価格が明記されていないのもそのためだろう。
文庫本の面積を変えずに正方形にした按配だから、豆本というにはちょっと大きいが、挿絵と短詩とのバランスがちょうど良い。裝丁は栃折久美子、なかなか丁寧な仕事をしている。
見開きに一編ずつ、総計19編の詩とイラストで構成されていて、それぞれが幸福な融合を実現している。世に詩画集の類は多いが、たいがいどちらかが他方の飾りになったり、説明的だったり、主従の関係になっていたりして、水準の高いものには、滅多にお目にかかれない。ひどいときには、お互いの足を引っ張り合いしていることさえあり、個人的には、詩集に挿絵など不必要だと思っている。
しかしこの「おんなのこ」は希有な例外だといえよう。贔屓の引き倒し傾向の強いMorris.だが、とりたてて本書が芸術的な名詩と名画との出会いだと評価してるわけではない。いわば、ライトヴァースとライトイラストの取合わせて、詩画集そのもののライト感覚に、ぴったりはまっているということにでもなるのだろう。
これを手に入れた頃には工藤久美子の名前はあまり知られていなかった。カバー見返しに「コピーライター出身」とあったので、なるほどなと思ったくらいだ。最近は童話、詩集、エッセイで隨分活躍が目立つ。さのようこは、その頃すでに「百万回生きた猫」という名作絵本の作者としてお馴染みだった。これは外賀君や春待ちファミリーBANDの仲間がやってた椿ハウスコンサートで、人形劇として上演したこともあるので、今でも懐かしい。「おんなのこ」では褐色の地にクロッキー風のラフな描線を用い、部分的に彩色を施している。
好きなもの
好きなもの というのは
たいせつ です
わたしの たいせつなものは
「生きている」ことです
そのせいでしょうか わたしは
ふしあわせ も 愛します
痛い
好きに なるのは
心を ちぎって
あげてしまう のだから
痛くて しかたないのです
こころ
「心が砕ける」というのは
たとえばなしだと 思っていた 昨日まで
今朝 心は砕けていた ほんとうに
ひとつひとつ かけらをひろう
涙が出るのは
かけらに日が射して眩しいから
砕けても心はわたしのもの
ていねいに ひろう
ルイス・キャロルが、アリスを始めとする少女たちに、ある種の理想を透視していたように、ぼくの心の中にも、理想のおんなのこが棲んでいるらしいのだが、これらの詩に出てくるイメージが、そのおんなのこの、ある日のスナップショットのように感じられて、固執せざるを得ない。